静的なリストから、匿名訪問者まで含むリアルタイム動的 Segments へ。2026 年の HubSpot では「誰に・何を・いつ」届けるかをデータで自動制御できる。セグメント設計の実装方法から、Web・メール・CTA のパーソナライゼーションまで、オーディエンス設計の全体像を解説する。
HubSpot を以前から使っているユーザーにとって、最も大きな概念変化のひとつが Lists(リスト)から Segments(セグメント)へのシフトだ。2025〜2026 年にかけて、HubSpot はセグメンテーションの軸足をリストから Segments に移しつつある。両者は似ているようで、設計思想が根本的に異なる。
2026年3月時点でも Lists は HubSpot に存在し、メール配信・一部のワークフロートリガーでは引き続き使われている。「Segments に全移行する」のではなく、新規の施策設計では Segments を使い、既存の Lists はメンテナンスしながら並走させるのが現実的な移行パスだ。HubSpot 自身も「Segments はリストを置き換えるものではなく、より高度なオーディエンス管理を可能にするレイヤー」と説明している。
| 機能 | Segments 対応 | Lists 対応 | 備考 |
|---|---|---|---|
| メール配信 | ○ | ○ | どちらも使用可能 |
| ワークフロートリガー | ○(2025年〜) | ○ | Segments 対応は段階的に拡大中 |
| 広告オーディエンス連携 | ○ | △(一部) | Google・Meta 広告への同期は Segments が推奨 |
| 匿名訪問者のターゲティング | ○ | ✗ | Segments のみ対応 |
| Web パーソナライゼーション | ○ | ✗ | Segments のみ対応 |
| Breeze AI による提案 | ○(Lookalike 等) | ✗ | Segments のみ対応 |
Segments は マーケティング → Segments(または CRM → Segments)から作成できる。条件は AND(すべてを満たす)と OR(いずれかを満たす)を組み合わせてグループ化でき、複雑なオーディエンス定義も直感的に設計できる。
| カテゴリ | 使える条件の例 |
|---|---|
| コンタクト属性 | 名前・メール・役職・電話番号・言語・ライフサイクルステージ・リードスコア・ペルソナ |
| 会社属性 | 会社名・業種・従業員数・売上規模・ICP フラグ(カスタム)・所在地 |
| Web 行動 | 特定ページの訪問・訪問回数・最終訪問日・滞在時間・フォーム送信済みページ |
| メール行動 | 特定メールを開封・クリック・未開封・配信停止・直近 N 日間の開封数 |
| 広告行動 | 特定広告をクリック・特定キャンペーンに接触・広告経由でコンバージョン |
| CRM アクティビティ | 商談ステージ・最終接触日・担当営業・製品購入履歴・サポートチケット数 |
複雑なセグメントを設計するとき、OR グループで「対象となりうる広いオーディエンス」を定義し、AND 条件で「本当にターゲットとする行動・属性」に絞り込むという二段構成が分かりやすい。例:「IT 業界 OR 製造業(OR)」かつ「役職が部長以上 AND 過去14日以内にサイト訪問(AND)」のように組む。
マーケティング → Segments → 新しいセグメントを作成 をクリック[ペルソナ]_[ステージ]_[行動]_[日付])に従って保存するHubSpot の Segments が Lists と最も異なる点のひとつが、匿名訪問者(まだフォームを送信していない未知の訪問者)を対象に含められることだ。Web サイトへの訪問者の大多数は匿名であり、彼らをターゲティングできるかどうかは集客効率に大きく影響する。
HubSpot は訪問者が Cookie を受け入れた場合、コンタクトとして登録される前でも以下の情報を記録する。
Breeze Intelligence で「製造業」と特定された匿名訪問者を Segment に入れ、製造業向けの LP や広告リターゲティングの対象にする。フォーム送信前から業界別メッセージを届けられる。
広告リターゲティング / Web パーソナライズ料金ページを訪問したことがある匿名訪問者を Segment に追加。ポップアップで「料金についてご質問はありますか?」チャットを自動表示、または Google/Meta 広告でのリターゲティングに活用する。
ポップアップ / 広告リターゲティング過去30日以内に3回以上サイトを訪問した匿名ユーザー。関心度が高いことが推定されるため、コンバージョン専用の LP に誘導するポップアップや Exit Intent を表示する。
Exit Intent ポップアップ / LP リダイレクト広告キャンペーン(utm_campaign = 特定値)経由で来訪したが、まだフォームを送信していない訪問者。同じキャンペーンの別クリエイティブで再アプローチ、または有料広告でのリターゲティングに使う。
広告リターゲティング / A/B テスト匿名訪問者の行動データは Cookie によって収集されるため、Cookie 同意バナーの適切な設置が前提となる。訪問者が Cookie を拒否した場合、匿名セグメントへの追加は行われない。また、IP 逆引きによる会社特定は「会社レベル」の情報であり個人特定ではないため、個人情報保護法の観点では別途確認が必要だ。自社の法務チームに相談のうえ設計しよう。
Segments を定義したら、次はその Segment に応じてコンテンツを「出し分ける」パーソナライゼーションを実装する。HubSpot では Web コンテンツ・メール・CTA の3つのチャネルでパーソナライゼーションが利用できる。
| チャネル | 出し分けできる内容 | 使用機能 | プラン |
|---|---|---|---|
| Web コンテンツ | ヘッドライン・本文・画像・CTA・バナー全体 | Personalization(コンテンツ → パーソナライゼーション) | Professional〜 |
| メール | 件名・本文テキスト・画像・CTA ボタン・差し込み変数 | パーソナライゼーショントークン / スマートコンテンツ | Starter〜(基本) / Professional〜(スマートコンテンツ) |
| CTA | 表示する CTA 全体(ボタン・画像・テキスト) | スマート CTA(3章で解説) | Professional〜 |
HubSpot の Personalization 機能(コンテンツ → パーソナライゼーション)を使うと、同一 URL のページでも訪問者のセグメントによって表示内容を切り替えられる。
コンテンツ → パーソナライゼーション → ルールを作成 から対象セグメントと表示コンテンツを設定するメールにおけるパーソナライゼーションは大きく2種類ある。①パーソナライゼーショントークン(差し込み変数)と ②スマートコンテンツ(セグメント別コンテンツブロック)だ。
件名・本文に {{contact.firstname}} や {{contact.company}} を挿入すると、配信時にコンタクトのプロパティ値に自動置換される。件名に名前を入れるだけで開封率が 20〜30% 向上するという調査結果もある。ただし「フォールバック値(未入力時のデフォルト値)」を必ず設定すること——プロパティが空白だと「こんにちは、{{contact.firstname}}様」のようにトークンがそのまま表示されてしまう。
Segments の設計がどれだけ丁寧でも、それを実際のマーケティング施策に結びつけなければ意味がない。ここでは3つの代表的なユースケースでセグメントの活用方法を具体的に見ていく。
「資料DLして以降なにもしていないリード」を段階的に育成し、MQL に引き上げる。
各 Segment の条件が満たされた瞬間にコンタクトが次のセグメントに自動移動し、ワークフローがトリガーされるため、担当者が手動でリストを管理する必要がない。コンタクトが行動を取るたびに自動的に「次のステップ」に進む設計だ。
現在 Starter プランを利用しているが、Professional の機能を必要とするシグナルを示している顧客を特定する。
| セグメント名 | 条件 | アクション |
|---|---|---|
| Starter_アップセル候補A | 現在 Starter 利用 AND Professional 機能ページを訪問 AND 利用開始から6ヶ月以上 | カスタマーサクセス担当に通知 + アップグレード案内メール送信 |
| Starter_アップセル候補B | 現在 Starter 利用 AND ウェビナー(上位プラン紹介)に参加済み AND チャットで機能質問あり | 30分の個別デモ案内メール + スマート CTA でアップグレードを表示 |
| 高エンゲージメント顧客 | 過去30日のログイン数 ≥ 20 AND サポートチケット数 = 0 AND NPS スコア ≥ 8 | 紹介プログラム案内 + 事例掲載の打診 |
一定期間アクティビティがないコンタクトを「休眠」として特定し、再接触を試みる。
Segments が増えると管理が煩雑になる。命名規則:[対象]_[ステージ]_[行動条件]_[作成月](例:SaaS_MQL候補_料金ページ訪問_202604)を設定し、四半期ごとに「使われていないセグメント」を棚卸しして削除・統合する習慣をつけよう。HubSpot の Segments 管理画面では最終使用日が確認できる。
Segments は匿名訪問者・リアルタイム更新・AI 提案・広告連携に対応。Lists は廃止されず、新規設計は Segments を使う。
OR グループで広くオーディエンスを定義し、AND 条件で絞り込む。Segment Builder のリアルタイムプレビューで規模感を確認しながら設計する。
Breeze Intelligence の IP 逆引きで会社を特定、閲覧行動で興味を推定する。フォーム送信後に行動履歴が自動マージされる。
同一ページで最大4〜5種類のコンテンツを Segment 別に設定できる。パーソナライゼーショントークンで件名・本文を個別最適化する。
行動トリガーでセグメント間を自動移動させることで、担当者が手動管理しなくてもリードが次のステップに進む仕組みを作る。
90日以上無反応のリードへの再エンゲージメントを試み、それでも反応がなければ配信停止。リストのクリーンさが全体の配信品質を保つ。