HubSpot のワークフローは「マーケティングの自動化エンジン」だ。リードへのフォローアップ・MQL 自動昇格・営業への通知・オンボーディングシーケンスまで、ビジネスの重要なプロセスを一度設計するだけで24時間365日自動実行できる。正しいトリガー設計・分岐ロジック・複数オブジェクト連携を習得して、チームの生産性を解放しよう。
HubSpot のワークフローは、どれだけ複雑なシナリオでも本質的には3つの要素で構成されている。「何があったら(トリガー)」「何をする(アクション)」「条件によって処理を分ける(分岐)」——この3要素の組み合わせですべての自動化が実現できる。
HubSpot のワークフローは「どのオブジェクトを起点にするか」によって種類が分かれる。自動化 → ワークフロー → 作成 からオブジェクトを選んで作成する。
| ワークフローの種類 | 起点オブジェクト | 代表的な用途 | プラン |
|---|---|---|---|
| コンタクトベース | コンタクト | ナーチャリング・MQL昇格・オンボーディング・配信停止処理 | Starter〜 |
| 会社ベース | 会社 | ICP スコア更新・アカウントベース施策・ABM 通知 | Professional〜 |
| 商談ベース | 商談 | ステージ変更通知・クローズ後フォロー・失注後ナーチャリング | Professional〜 |
| チケットベース | サポートチケット | SLA 管理・エスカレーション・解決後フォロー | Professional〜 |
| カスタムオブジェクトベース | カスタムオブジェクト | 独自のビジネスオブジェクトを起点にした自動化 | Enterprise〜 |
多くの失敗は「何となく自動化する」ことから生まれる。ワークフロー設計を始める前に必ず 「このワークフローで最終的に何が達成されればよいか」を定義すること。例:「資料 DL 後7日以内に 30% の人がウェビナー申込に到達すること」というゴールがあれば、そこから逆算して必要なメール本数・タイミング・分岐条件が決まる。
トリガー設計の良し悪しがワークフローの精度を決定する。「誰に・どのタイミングで」ワークフローを発動させるかが正確でないと、関係のない人に誤った自動メールが届いたり、肝心な人がフローに入り損ねたりする。
| オプション | 設定内容 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 再登録の許可 | 同じコンタクトがトリガー条件を再度満たした場合にワークフローを再実行するか | 定期的なウェビナー案内(毎回参加してほしい)/ 月次ニュースレター配信には「許可する」 |
| フィルター条件(入力前条件) | トリガーが発火してもワークフローに「入れない」条件を設定する | 「既存顧客は除外」「配信停止済みは除外」「競合他社のドメインは除外」 |
| タイムゾーン指定 | アクション実行時刻をコンタクトのタイムゾーンに合わせる | グローバル展開・海外顧客への適切な時刻での配信 |
| 登録上限 | 1つのワークフローに同時に登録できるコンタクト数の制限 | 大量登録による配信サーバーへの負荷を防ぐ(通常は設定不要) |
トリガーを設定するとき、「このワークフローに入れてはいけない人」の除外条件を忘れがちだ。よくある失敗例:既存顧客に「初めてのご案内」メールが届く、配信停止済みの人が再登録されてしまう、社員のテストアカウントがナーチャリングフローに入る——これらはすべて除外条件の設定漏れが原因だ。トリガーを設定したら必ずフィルター条件を確認しよう。
ワークフローの「知性」は分岐にある。全員に同じアクションを実行するだけなら、Segment 別メール配信で十分だ。分岐を使うことで「この人がこの行動を取ったかどうか」によって次のステップを変える、本当の意味での個別対応が可能になる。
| 遅延タイプ | 設定方法 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 固定時間遅延 | 「X 時間後」「X 日後」など絶対的な待機時間 | ウェルカムメールは送信直後、フォローアップは3日後など定番のシーケンス |
| 特定日時まで待機 | 「次の月曜日まで待つ」「午前9時まで待つ」 | 営業時間内に通知・アクションを実行したい場合。週末や深夜の自動送信を避けるため |
| プロパティ日付まで待機 | コンタクトの日付プロパティ(契約更新日・誕生日等)の X 日前・後まで待つ | 契約更新リマインダー・anniversary メール・更新期限アラート |
多くの初心者が「条件を満たした場合」だけを設計して「満たさなかった場合」を放置してしまう。else ルートのないワークフローはコンタクトが「宙ぶらりん」になる。最低でも「else → 低優先度ナーチャリングへ」「else → プロパティにタグを付けて後で確認」のどちらかのルートを用意しよう。
リードスコアリングは「どのリードが今すぐ営業と話す準備ができているか」をデータで判断する仕組みだ。HubSpot ではデフォルトのスコアリングプロパティ(HubSpot Score)と、カスタムのカスタムスコアプロパティを使ってスコアを管理できる。
| 行動・属性 | スコア | 重み付けの根拠 |
|---|---|---|
| デモ申込フォームを送信 | +40 | 購買意図が最も高いアクション |
| 料金ページを訪問(1回) | +15 | 価格検討フェーズへの移行シグナル |
| 料金ページを3回以上訪問 | +25 | 検討が具体化している強いシグナル |
| ウェビナーに参加 | +20 | 能動的なエンゲージメントの証拠 |
| 事例・ホワイトペーパーをDL | +10 | 情報収集・比較フェーズのシグナル |
| 役職が「部長」以上 | +15 | 意思決定権を持つペルソナへの適合 |
| 従業員数 50 名以上 | +10 | ICP のサイズ基準に適合 |
| メールを30日以上未開封 | −10 | エンゲージメント低下のシグナル |
| 配信停止済み | −30 | 現時点でのアプローチを停止すべき状態 |
| 無料メールドメイン(gmail等) | −10 | B2B の ICP に適合しない可能性が高い |
設定 → プロパティ → HubSpot スコア から各条件のスコア値を設定する。条件は「ポジティブ属性」と「ネガティブ属性」の2種類で設定できるHubSpot スコア が 50 以上になった を「プロパティ変更」トリガーとして設定するライフサイクルステージ → MQL に更新する。ダウングレードを防ぐため「現在より後退する場合は更新しない」オプションを有効にする上記は「ルールベース」のスコアリングだ。Professional 以上では Breeze Predictive Scoring(予測リードスコアリング)も使える。こちらは過去の成約データから AI がパターンを学習し、「このコンタクトが顧客になる確率」を0〜100のスコアで自動計算する。ルールベースとの違いは、設定不要で自動学習・更新される点だ。両方を組み合わせて使うのが 2026 年のベストプラクティスだ。
HubSpot のデータモデルはコンタクト・会社・商談・チケットなどのオブジェクトで構成されている。ワークフローはそれぞれのオブジェクトを起点に作れるが、さらにオブジェクト間をまたいでアクションを実行することで、より高度な自動化が可能になる。
理論を理解したら、実際に使えるシナリオを手元に持っておくことが重要だ。ここでは業務別の定番シナリオを整理したうえで、AI が自動でジャーニーを最適化する Journey Automation の概要を解説する。
2025〜2026 年にかけて本格化している Journey Automation は、個別ワークフローの設計を AI が補助・自律化する機能だ。「どのチャネルで・何を・いつ届けるか」を AI が学習・判断するため、マーケターが細かいワークフロー設計をしなくても最適なジャーニーが自動構築される方向に進化している。
コンタクトのライフサイクルステージと過去の行動から、「次に届けるべきコンテンツとチャネル」を Breeze が提案する。担当者は提案をレビューして承認するだけでよい。
メール・SMS・チャット・広告のうち「このコンタクトが今最も反応しやすいチャネル」を AI がリアルタイムで判断してアクションを実行する。チャネル選択を AI に委ねられる。
ワークフロー内のメール・コンテンツを継続的に A/B テストし、勝者バリアントを自動適用するループが自律稼働する。人間が個別にテストを設定・分析する必要がなくなる。
各ワークフロー・ジャーニーの「ボトルネック(どのステップで離脱が多いか)」を自動検出し、改善提案を行う。ダッシュボードで全ジャーニーの健全性を一括管理できる。
2026年初頭から、ワークフロー編集画面に Breeze Copilot が統合されている。「新規リードへのナーチャリングシーケンスを設計して」と自然言語で指示するだけで、ワークフローの骨格を自動生成してくれる。生成された骨格を編集・調整する形で進めることができるため、ゼロから設計する工数が大幅に削減されている。
トリガー(何があったら)・アクション(何をする)・分岐(条件によって処理を変える)の組み合わせですべての自動化を設計する。
既存顧客・配信停止済み・社員テストアカウントなどの「入れてはいけない人」の除外条件を設計の最初に決める。
条件を満たした場合だけでなく「満たさなかった場合」のルートを設けないと、コンタクトが宙ぶらりんになる。
スコアしきい値到達 → ライフサイクル更新 → タスク作成 → Slack 通知の一連のフローを最初に構築する。
コンタクト行動 → 会社プロパティ更新 → 全コンタクトへのアクションという横断設計で、アカウントベースのマーケティングが自動化できる。
Breeze がジャーニー全体を提案・最適化。Copilot による自然言語でのワークフロー生成で、設計工数が大幅削減される。