🟢 HubSpot Service Hub 実践教科書 — 2026年版
Chapter 6

カスタマーポータルの設計
UX・ブランディング・フィードバック収集

カスタマーポータルは「顧客が自社に問い合わせる唯一の入口」になりうる場所だ。チケットの追跡・ナレッジベースの閲覧・新規問い合わせの作成を1つの画面で完結させることで、顧客体験を劇的に改善しながらサポートチームへの問い合わせ件数を減らすことができる。この章ではポータルの基本設定・UX 設計・ブランディング・2025年3月以降のチケットラベルカスタマイズ・フィードバック収集の仕組みを体系的に解説する。

📖 読了目安 25分
🎯 対象:CS マネージャー・Web 担当・HubSpot 管理者
📅 2026年3月版 — チケットラベルカスタマイズ(2025年3月〜)対応

📋 この章の内容

  1. 6-1カスタマーポータルの概要と設定
  2. 6-2ポータルの UX 設計とブランディング
  3. 6-3チケットラベルのカスタマイズ(2025年3月〜)
  4. 6-4ポータルからのフィードバック収集
Section 6-1

カスタマーポータルの概要と設定

カスタマーポータルとは、顧客専用のログイン付き Web ページだ。顧客はここで「自分が送ったチケットの進捗確認」「返信のやりとり」「ナレッジベースの検索」「新しいチケットの作成」を一箇所で行える。ポータルがないと顧客は「メールを送ったが届いているか不明」という不安を抱え、確認のためにもう一度メールを送る——これが重複チケットの主な原因だ。Service Hub Professional 以上で利用できる。

🌐 カスタマーポータルが顧客とサポートチームに与える価値
👤
顧客にとっての価値
チケットの現在ステータスをリアルタイムで確認できる。返信を待ちながら不安になる必要がなくなる。KB で自己解決できるため「問い合わせを送るほどでもない」質問を解消できる。
重複チケット削減
🎧
サポートチームにとっての価値
「先ほど送ったメールは届きましたか?」という進捗確認メールが大幅に減る。顧客がポータル経由でチケット作成すると、フォームのフィールドから情報が揃った状態でチケットが作られる。
情報収集の自動化
📊
ビジネス全体にとっての価値
自社ブランドのドメイン(help.御社.com)でポータルを公開できる。顧客が毎回ポータルを訪れることで、KB の閲覧データ・検索クエリ・フィードバックが蓄積され改善の根拠になる。
ブランドCX の向上

設定の流れとカスタマイズ項目

設定カテゴリ設定場所主な設定項目
基本設定 サービス → カスタマーポータル → 設定 ポータルの有効化・サブドメイン設定(例:help.yourcompany.com)・言語設定・タイムゾーン
ブランディング サービス → カスタマーポータル → ブランディング ロゴ・ファビコン・ブランドカラー(プライマリ・セカンダリ)・フォントの選択
ナビゲーション サービス → カスタマーポータル → ページ 表示するページ(ホーム・チケット・KB)の選択・ナビゲーション項目のラベル変更
チケット設定 サービス → カスタマーポータル → チケット 顧客が作成できるチケットフォームのフィールド設定・チケットラベルのカスタマイズ(2025年3月〜)
KB 表示設定 サービス → カスタマーポータル → ナレッジベース 表示する KB カテゴリの選択・記事の並び順・「記事が見つからない場合のサポート誘導」メッセージの編集
アクセス制御 サービス → カスタマーポータル → アクセス 全員に公開 / HubSpot アカウントが必要 / 招待されたコンタクトのみ——3段階から選択
💡 サブドメイン設定は最初に行う——後から変更すると顧客にブックマーク通知が必要

ポータルの URL(サブドメイン)は後から変更できるが、変更すると顧客がブックマークしていた URL が無効になる。設定の最初の段階で「help.御社ドメイン.com」のサブドメインを決定し、DNS 設定を完了させてから顧客に案内する。DNS の設定が完了するまで数時間かかる場合があるため、余裕を持って設定しておこう。

完成形ポータルのモックアップ

ホーム
マイ依頼
ナレッジベース
お問い合わせ
山田 太郎
こんにちは、山田様。何かお困りですか?
ナレッジベースで検索するか、依頼を作成してください
🔍
📋 最近の依頼
#4821
API 連携でエラーが発生する(決済処理)
2026/03/08 · 担当:田中 恵子
対応中
#4798
レポートの共有方法について
2026/03/02 · 担当:山田 恵子
回答待ち
#4755
CSV エクスポートの文字化け
2026/02/20 · 解決済み
解決済み
+ 新しい依頼を作成する
📚 よく読まれている記事
🚀
はじめに
12 記事
⚙️
機能ガイド
28 記事
🔧
トラブルシューティング
15 記事
💳
請求・契約
8 記事
📄 新着・人気記事
ログインできない場合の確認手順
パスワードをリセットする方法
請求書のダウンロード方法
Section 6-2

ポータルの UX 設計とブランディング

ポータルのデザインが「いかにも汎用ツール」のままだと、顧客は「自社のサービスとして信頼できるのか」という疑念を持つ。自社ブランドの配色・ロゴ・言葉遣いをポータルに統一することで、顧客がポータルを「自社サービスの一部」として自然に受け入れるようになる。また UX 設計の原則を守ることで、顧客が目的の情報にたどり着くまでの操作ステップを最小化できる。

🔍
原則①:検索を最上段に配置する
顧客がポータルを開いたとき、最初に行うのは「検索」だ。ヒーロー領域に検索バーを大きく配置し、よく検索されるキーワードをサジェスト表示することで、自己解決率が向上する。
❌ 悪い例
カテゴリ一覧が先に並び、検索バーが下の方にある
✅ 良い例
ページを開いた瞬間に検索バーが目に入り、すぐ入力できる
📋
原則②:チケット一覧は「最新が上」に表示する
顧客がポータルを訪れる最大の目的は「送ったチケットの進捗確認」だ。最新のチケットが最上段に表示され、ステータスが色とラベルで即座にわかる設計が重要。
❌ 悪い例
古いチケットが上に並び、最新の状況を探さないといけない
✅ 良い例
最新チケットが最上段。ステータスバッジで一目で状況がわかる
💬
原則③:KB を読んだ後にしか問い合わせボタンを表示しない
「問い合わせを作成する」ボタンをすぐに表示すると、KB を読まずに問い合わせが来る。検索して記事を1本以上閲覧した後にボタンを表示する設定で自己解決を促進する。
❌ 悪い例
ポータルを開いた瞬間に「問い合わせを作成」ボタンが目立つ
✅ 良い例
「この記事で解決しましたか? いいえ→問い合わせ作成」の誘導
📱
原則④:モバイルファーストで確認する
顧客の30〜50%はスマートフォンからポータルにアクセスする。HubSpot のポータルはレスポンシブ対応だが、カスタム CSS を追加した場合はモバイル表示を必ず確認する。
❌ 悪い例
PC では美しいが、スマホでは文字が小さく検索バーが使いにくい
✅ 良い例
スマホでも検索・チケット確認・問い合わせ作成がストレスなくできる

ブランディング設定項目

🎨
ブランドカラー
ボタン・リンク・アクティブ状態のカラーを自社のプライマリカラーに設定する。ヘッダーの背景色も変更可能。HEX コードで正確に指定する。
ブランディング → プライマリカラー
🖼️
ロゴ・ファビコン
ヘッダーに表示するロゴ画像(PNG / SVG 推奨)とブラウザタブのアイコン(ファビコン)を設定する。白背景に対応した版と透過版の両方を用意しておく。
ブランディング → ロゴをアップロード
🔤
ポータル名・タイトル
ブラウザタブに表示されるページタイトル・ヘッダーのポータル名を自社ブランドに合わせて設定する。「HubSpot」の文字列を消すことで完全な自社ブランドに見える。
設定 → ポータル名
🌐
カスタムドメイン
デフォルトは「company.hubspotpagebuilder.com」だが、「help.yourcompany.com」のカスタムドメインを設定することで完全な自社ブランドで公開できる。DNS の CNAME 設定が必要。
設定 → カスタムドメイン
🗣️
表示言語のカスタマイズ
「マイチケット」「ナレッジベース」「お問い合わせ」などのナビゲーションラベルを自社の言葉に変更できる。「マイ依頼」「サポートを受ける」など、顧客が親しみやすい言葉を選ぶ。
設定 → ページ → ラベル編集
✉️
通知メールのブランディング
「チケットが更新されました」などのポータル通知メールの差出人名・ロゴ・フッターを自社ブランドに設定する。顧客が「知らない会社からのメール」と判断して開封しない事態を防ぐ。
設定 → 通知 → メールテンプレート
Section 6-3

チケットラベルのカスタマイズ(2025年3月〜)

2025年3月のアップデートで、カスタマーポータル上の「Tickets(チケット)」というラベルを自社ビジネスに合った言葉に変更できるようになった。顧客には「チケット」という IT サービス特有の用語が馴染みにくい場合が多い。業種・顧客層に合わせた言葉を使うことで、ポータルの利用率が上がり、問い合わせの心理的ハードルが下がる

SaaS / IT サービス
Tickets
インシデント
IT 担当者が慣れ親しんだ ITIL 用語。「インシデント管理」の流れで自然に使える
製造・建設・設備
Tickets
依頼 / 作業依頼
現場担当者が「依頼書」「作業指示」に馴染んでいる。「チケット」より分かりやすい
医療・クリニック
Tickets
ご相談
患者・関係者が「相談」という言葉に安心感を持つ。医療倫理にも沿った表現
EC・小売・D2C
Tickets
お問い合わせ
消費者に最も親しみやすいシンプルな言葉。「問い合わせ履歴」として過去の状況を確認しやすい

ラベル変更の設定手順

変更対象のラベル設定場所変更例
ポータル内「Tickets」タブ名 サービス → カスタマーポータル → チケット → ラベルを編集 「Tickets」→「マイ依頼」「インシデント」「ご相談」
「新しいチケットを作成」ボタン 同上 → ボタンラベル 「新しいチケットを作成」→「新しい依頼を作成する」「問い合わせを送る」
チケット詳細ページの見出し 同上 → 詳細ページラベル 「チケット詳細」→「依頼の詳細」「インシデント詳細」
通知メールの文言 設定 → 通知 → メールテンプレート → 本文を編集 「チケット #4821 が更新されました」→「ご依頼 #4821 の状況が更新されました」
✅ ラベル変更後は通知メール・ヘルプ記事・オンボーディング資料も統一する

ポータルのラベルを「依頼」に変えたのに、顧客宛ての通知メールには「チケット」と書かれていると混乱を招く。ラベル変更をした後は「通知メールの文言」「KB の記事内で『チケット』と書かれている箇所」「新規顧客への案内資料」も一括して同じ言葉に統一する作業をセットで行うことが重要だ。

Section 6-4

ポータルからのフィードバック収集

カスタマーポータルは顧客と継続的に接する場所だからこそ、フィードバックを収集する絶好のタイミングと場所でもある。チケットがクローズした直後・KB 記事を読んだ後・ポータルにログインした後——これらのタイミングで短いサーベイを表示することで、顧客の声をリアルタイムで蓄積できる。

CSAT サーベイのデザイン(ポータル内表示)

サポートへのご評価をお聞かせください
依頼 #4821 · API 連携エラー(決済処理)
今回のサポート対応はいかがでしたか?
ご意見・改善点があればお聞かせください(任意)
※ いただいたフィードバックは品質改善に活用いたします

フィードバック収集の自動化設定

フィードバック種別送付タイミング自動アクション(低スコア時)
CSAT(顧客満足度) チケットクローズ後 1時間以内にメール送付(ポータル内バナーとセット) スコア2以下 → 担当エージェントにタスク作成「フォローアップ電話を1営業日以内に実施」
KB フィードバック 記事閲覧後・記事末尾の「役立ちましたか?」ボタン(常時表示) 「いいえ」率が30%超で7日継続 → KB 担当者にメール通知「記事の改善が必要です」
NPS(推奨度) 初回チケットクローズ後30日・以降は90日ごとに自動送付 スコア6以下(批判者)→ CS マネージャーに Slack 通知 + フォローアップタスク作成
CES(努力指数) 複雑なオンボーディングプロセス完了後・特定のチケットカテゴリのクローズ後 スコア低下のトレンド → 該当プロセスの見直し提案レポートを月次で CS リーダーに送付
💡 フィードバックは「収集」より「アクション」が重要

CSAT サーベイを送っても、結果を見るだけでアクションしなければ顧客満足度は上がらない。「CSAT 低スコア → 24時間以内のフォローアップ」というワークフローを設定することが、サーベイを設置する最大の効果だ。「サーベイで批判を受けたが、翌日に担当者から電話があって丁寧に対応してもらった」という体験が、顧客を批判者からプロモーターに変える最も確実な方法だ。

📌 第6章 まとめ

ポータルは「重複チケット防止」と「自己解決促進」の両方を実現する

チケットの進捗がポータルで確認できるようになると「届いたか確認のメール」が大幅に減る。KB を検索してから問い合わせを作成する導線にすることで、エージェントへの問い合わせ件数を削減できる。

サブドメインとブランディングは設定の最初に行う

URL(help.御社.com)は後から変更するとブックマーク無効化の案内が必要になる。ロゴ・カラー・ポータル名・通知メールのブランドを初期設定で一括して自社ブランドに統一してから顧客に案内する。

検索バーを最上段に・KB 閲覧後に問い合わせボタンを表示する UX 設計

顧客がポータルを開いた瞬間に検索バーが目に入る配置が自己解決率を高める。「問い合わせを作成する」ボタンは KB 検索・閲覧の後に表示する導線を設計することで、KB の利活用率が上がる。

2025年3月〜:チケットラベルを自社の言葉に変える

「Tickets」→「依頼」「インシデント」「ご相談」など業種に合わせた言葉に変更する。変更後は通知メール・KB 記事・案内資料も一括して同じ言葉に統一することを忘れない。

CSAT 低スコアへの24時間以内フォローアップが顧客維持の要

サーベイの送付だけでは満足度は上がらない。CSAT2以下・NPS 批判者への自動タスク作成・Slack 通知ワークフローを設定し、フィードバックを受け取ったら24時間以内にアクションする仕組みを作る。

ポータルのフィードバックデータは KB 改善・プロセス改善の根拠になる

KB 記事の「役立たない」率・CSAT の低いチケットカテゴリ・NPS 批判者のコメントは、どこに改善投資をすべきかを示す最高のデータだ。月次で分析し、改善アクションに変換するサイクルを確立する。

Next Chapter
第7章:顧客フィードバックの設計 — NPS・CSAT・CES の使い分けと VoC 活用 →