「メールを書くたびに10分かかる」「コール前に毎回コンタクト履歴を読み返す」「週次レポートのコメントを手書きする」——Breeze Assistant はこれらの日常の繰り返し作業を数秒に圧縮する。エージェント(自律型 AI)のような大掛かりな設定は不要で、今日から使い始められる。本章では Assistant の全体像・使い方・Custom Assistant の構築・実務活用パターンを体系的に解説する。
Breeze Assistant(旧称 Breeze Copilot)は HubSpot のナビゲーションバー右上に常に表示される「AI サイドバー」だ。どのハブ・どのページにいても呼び出せる。チャット形式で質問・依頼をすると、今見ているレコードやページのコンテキストを踏まえた回答を生成する。
汎用 AI(ChatGPT・Claude など)との決定的な違いは「HubSpot の全データを文脈として持っている」点だ。「田中様の最新の取引状況を教えて」と入力するだけで、CRM に記録された全タッチポイント・過去のメール・取引フェーズを参照した回答が返ってくる。
INBOUND 2025 以降の Breeze Assistant は大幅に強化された。Web 検索機能(リアルタイムで外部情報を調査)、メモリ機能(過去の会話の好みや指示を記憶)、ファイルアップロード(PDF・スプレッドシートをその場で分析)、Google Workspace・Slack 連携(Gmail のメール・カレンダー・Slack メッセージを参照)が追加された。単純な「HubSpot 内の AI」から「会社全体の文脈を持つ AI」へと進化している。
Breeze Assistant のコンテンツ生成機能は「ゼロから書く」ではなく「良い下書きをもらって磨く」という使い方が最も効率的だ。汎用 AI との違いは、HubSpot 内のコンタクト情報・過去のやり取り・業種・役職を自動的に参照してパーソナライズされた内容を生成することだ。
営業担当者がコール前に「この顧客との経緯」を把握するために過去メール・メモ・取引履歴を読み返す時間は、平均 8〜12分と言われている。Breeze Assistant の「レコード要約」機能はこれを30秒に圧縮する。
| シーン | プロンプト例 | 得られる情報 |
|---|---|---|
| コール前確認(5分前) | 「この人との経緯を3行でまとめて。最後のコンタクトから今日何日経ってる?」 | 過去の全活動サマリー・最終接触日・ネクストアクション |
| 引き継ぎ時 | 「この顧客を引き継ぐ。前任者が対応してた内容と、今の懸念点を整理して」 | 過去の全履歴・未解決の課題・関係者リスト |
| パイプラインレビュー | 「今月クローズ予定の取引で、リスクが高いものはどれ?理由も教えて」 | 確度が低い取引・活動が止まっている案件の自動検出 |
| 週次チームミーティング準備 | 「今週のチームの活動サマリーと、来週注力すべき取引を教えて」 | チーム全体の活動量・パイプラインの動き・優先度付け |
| 解約リスクの早期検知 | 「最近 30 日間でヘルススコアが下がった顧客はどれ?最後の活動日も教えて」 | エンゲージメント低下顧客のリスト・最終活動日 |
HubSpot の通話録音機能(Conversation Intelligence)と組み合わせると、通話終了後に「通話サマリー・決定事項・ネクストアクション」を自動生成できる。「今の通話をまとめて、CRM に保存すべきメモを書いて」と入力するだけで、手動メモが不要になる。これは Sales Hub Professional 以上で利用可能。
Breeze Assistant の標準機能は HubSpot のデータを参照して動くが、Custom Assistants はそこに「自社固有の知識」を追加できる。製品マニュアル・社内ポリシー・競合比較表・業界用語集を「Knowledge Vault(ナレッジボールト)」に登録することで、「自社製品のことを深く知っている専用 AI アシスタント」が完成する。
例えば「製品仕様に詳しいサポートアシスタント」「自社のブランドガイドラインを守るコンテンツアシスタント」「競合情報をもとにトークスクリプトを生成する営業アシスタント」が作れる。
① 新入社員のオンボーディング:社内ルール・製品知識・よくある質問をナレッジボールトに登録した「新人サポートアシスタント」を作れば、何度でも同じ質問ができる AI 教師になる。② ブランドボイスの統一:ブランドガイドライン・成功事例・禁止表現をまとめて学習させれば、誰がコンテンツを生成しても一貫したトーンになる。③ 複雑な製品の営業支援:技術仕様書・FAQ・競合比較を学習させた「営業アシスタント」は、商談中にリアルタイムで技術的な質問に答えてくれる。
Breeze Assistant を毎日使っているチームと、たまにしか使わないチームの差は「具体的な使い方のパターンを知っているかどうか」だ。以下は部門別の代表的な活用パターン10選だ。
エージェントと違い、Breeze Assistant はデータが不完全でも今すぐ使い始められる。コール前ブリーフィング・メール下書き・レポート解説は明日から実践できる。まずは「コール前30秒ブリーフィング」から始めてチームの習慣にする。
汎用 AI との最大の差別化は CRM データへのアクセス。コンタクト・取引・チケットのレコードを開いた状態でプロンプトを入力することで、その人・案件固有の情報を踏まえた出力が得られる。「名前だけ入れて残りは AI が埋める」使い方が最も効率的。
製品マニュアル・ブランドガイドライン・競合比較を Knowledge Vault に登録すれば、誰でも社内知識に基づいたコンテンツを生成できる。新入社員のオンボーディング・営業支援・コンテンツ品質の均一化に特に効果大。
AI の出力は最終版ではなく出発点だ。メール送信前・レポート共有前に固有名詞・数値・日付を必ず確認する。「まず生成して、追加指示で改善するイテレーション方式」が最速で最高品質の出力を得るアプローチ。