📗 HubSpot Marketing Hub 実践教科書 — 2026年版
Chapter 3

リード獲得
フォーム・ポップアップ・チャットで
訪問者をコンタクトに変える

集客で呼び込んだ訪問者を「コンタクト」に変えることが、HubSpot マーケティングの第一の関門だ。フォームの設計・プログレッシブプロファイリング・UTM 取得・ポップアップのタイミング設計・Breeze Customer Agent による自動獲得まで、「取りこぼしをなくす」リード獲得インフラを完全構築する。

📖 読了目安 35分
🎯 対象:マーケ担当・Web担当・HubSpot管理者
📅 2026年3月版

📋 この章の内容

  1. 3-1フォームの種類(埋め込み・ポップアップ・収集フォーム)と使い分け
  2. 3-2フォームフィールド設計とプログレッシブプロファイリング
  3. 3-3hidden フィールド・UTM 取得・コンバージョントラッキングの完全設定
  4. 3-4ポップアップ・スライドインのタイミングとターゲティング設定
  5. 3-5チャット・チャットボットでのリード自動獲得(ライブチャット + Breeze Customer Agent)
  6. 3-6CTA の設計と設置 — スマート CTA でコンテンツを出し分ける
Section 3-1

フォームの種類と使い分け

HubSpot のフォームは大きく3種類に分類できる。どれを使うかはページの目的・訪問者の温度感・コンバージョン障壁の高さによって決まる。種類を混同したまま運用すると、フォームの送信率が大幅に落ちる原因になる。

📋
埋め込みフォーム
LP や記事内にインラインで表示されるフォーム。訪問者が能動的に操作する前提のため、コンバージョン意欲が高い場面で使う。
LP・資料DL・問い合わせ・ウェビナー申込
📱
収集フォーム(Non-HubSpot)
外部ツール(Typeform・Googleフォーム等)のデータを HubSpot に取り込む。既存フォームを変えられない場合や、イベント当日の受付など外部データソースに対応。
外部フォーム連携・イベント受付・オフライン

フォームのアクセス場所と作成方法

マーケティング → フォーム からフォームの一覧・新規作成ができる。フォームエディタではフィールドのドラッグ&ドロップ、条件分岐(依存フィールド)、送信後アクションの設定まで一通り対応している。

設定項目内容ポイント
フォームタイプ 埋め込み / ポップアップ / スタンドアローンを選択 あとから変更できないので慎重に選ぶ
送信後アクション サンキューメッセージ表示 / 別URLへリダイレクト サンキューページへのリダイレクトを推奨。次アクションを設置できる
既知コンタクトへの表示 すでに既知のコンタクトにフォームを表示するか否か プログレッシブプロファイリングを使う場合は「表示する」に設定
GDPR オプション 同意チェックボックス・プライバシーポリシーリンクの表示 EU向けや個人情報取扱いの要件に合わせて設定。特定電商法対応も忘れずに
💡 フォームの「送信後アクション」は必ずサンキューページへのリダイレクトに

「サンキューメッセージ表示」だと送信完了をコンバージョンとして計測しにくく、次のアクション(関連資料・ウェビナー案内・営業連絡予告)も設置できない。必ず専用のサンキューページを作成してリダイレクトする設計を徹底しよう。サンキューページのURLは UTM を除いた状態でコンバージョン計測に使う。

Section 3-2

フォームフィールド設計とプログレッシブプロファイリング

フォームのフィールド設計は、リード獲得数とデータ品質のトレードオフだ。フィールドが多いほどデータは充実するが、送信率が下がる。この問題を解決するのが プログレッシブプロファイリング——訪問者が複数回コンバージョンするたびに、少しずつ違う質問を積み重ねてプロファイルを完成させる手法だ。

フィールド数と送信率の関係

フィールド数目安となる送信率推奨シーン
1〜2項目 50〜70% メルマガ登録・ポップアップ(メールアドレスのみ)
3〜5項目 25〜45% 資料DL・ウェビナー申込(名前・メール・会社名・役職)
6〜9項目 10〜20% 問い合わせ・デモ申込(上記+課題・予算・時期)
10項目以上 5%未満 原則非推奨。必要な場合は複数ステップに分割する

プログレッシブプロファイリングの仕組み

HubSpot のフォームには「スマートフィールド」機能があり、すでに HubSpot に登録済みの情報はフィールドとして表示しないで、未取得の情報だけを聞く設定ができる。これにより毎回同じ質問を繰り返すことなく、接触を重ねるたびにプロファイルが充実していく。

📈 プログレッシブプロファイリング — 3回の接触でプロファイルが完成する
1回目のコンバージョン
資料ダウンロード
  • 氏名
  • メールアドレス
  • 会社名
📥 3項目を新規取得
2回目のコンバージョン
ウェビナー申込
  • 氏名(取得済み)
  • メール(取得済み)
  • 役職
  • 従業員数
📥 2項目を追加取得
3回目のコンバージョン
デモ申込
  • 氏名(取得済み)
  • 会社名(取得済み)
  • 現在の課題
  • 検討時期
  • 予算感
📥 3項目を追加取得

プログレッシブプロファイリングの設定方法

  1. フォームエディタでフィールドを「スマートフィールド」に設定する:各フィールドの設定画面で「このフィールドをスマートフィールドにする」をオンにする
  2. 「代替フィールド」を指定する:既知コンタクトがこのフィールドをスキップした場合に代わりに表示するフィールドを設定する(例:会社名が取得済みなら、次は「役職」を表示)
  3. フォームの最小フィールド数を設定する:既知コンタクトがフォームを開いたとき、最低いくつのフィールドを表示するかを設定(推奨:2〜3個)
  4. 動作をプレビューで確認する:「既知コンタクトとしてプレビュー」機能で、各コンタクトにどのフィールドが表示されるか事前確認できる
⚡ プロファイリングの優先順位:まず「MQL 判定に必要な情報」を設計する

「役職」「従業員数」「課題」「検討時期」——これらはリードスコアリングや営業への引き渡し判断に直結する情報だ。フォームフィールドの優先順位を決めるとき、「MQL 定義に必要な項目」を先に洗い出し、それを取得するためのプログレッシブシーケンスを逆算して設計するのがベストプラクティスだ(MQL 定義は6章で詳述)。

Section 3-3

hidden フィールド・UTM 取得・コンバージョントラッキングの完全設定

フォームで収集する情報は「訪問者が入力した情報」だけではない。どこから来たか(UTM)・どのページでコンバージョンしたか・最初のページはどこか——これらを hidden フィールドで自動取得することで、後のアトリビューション分析の精度が劇的に向上する。

hidden フィールドで自動取得すべき情報

hidden フィールド名取得する値HubSpot プロパティ
utm_source 流入元(google / linkedin / newsletter 等) hs_latest_source_data_1(自動)/ カスタムプロパティ
utm_medium メディア種別(cpc / email / organic 等) カスタムプロパティ推奨
utm_campaign キャンペーン名(1章で設計した命名規則) カスタムプロパティ推奨
utm_content クリエイティブ区別(A/B テスト等) カスタムプロパティ推奨
ページURL コンバージョンが発生したページの URL hs_analytics_last_url(自動)

hidden フィールドの設定方法

  1. フォームエディタでフィールドを追加:「フィールドを追加」から対象プロパティを選択し、フィールド種別を「hidden フィールド」に変更する
  2. 「デフォルト値」に取得先を設定する:UTM パラメータを取得するには JavaScript で URL パラメータを読み取る設定が必要(下記コード参照)
  3. HubSpot の自動取得プロパティを確認するhs_analytics_source(流入元)・hs_analytics_last_url(最終URL)などは HubSpot が自動で取得・更新する。これらを活用すると custom hidden フィールドの設定を最小化できる
// UTM パラメータを hidden フィールドに自動セットする JavaScript
// ページの <script> タグに追加するか、HubSpot のカスタム HTML モジュールに設置する
window.addEventListener('load', function() {
  var params = new URLSearchParams(window.location.search);
  ['utm_source', 'utm_medium', 'utm_campaign', 'utm_content'].forEach(function(param) {
    var val = params.get(param);
    if (val) {
      var field = document.querySelector('input[name="' + param + '"]');
      if (field) field.value = val;
    }
  });
});
// ※ HubSpot のトラッキングコードが読み込まれた後に実行されるよう配置する

コンバージョントラッキングの確認方法

コンバージョントラッキングの確認フロー
テスト送信を実行
コンタクト詳細で
UTMを確認
フォーム分析で
送信数を確認
キャンペーンレポート
に反映を確認
⚠️ Cookie 同意バナーと UTM 取得の注意点

HubSpot は 2026年5月から旧 Cookie 同意バナー(v1)を v2 へ自動移行する予定だ(HubSpot Developer Changelog 2026年3月発表)。v2 では訪問者が Cookie を拒否した場合、一部のトラッキングデータが取得できなくなる。UTM の取得方法を「Cookie 依存」と「URL パラメータ直接取得(上記 JS)」の両方で実装しておくと、データの欠損を最小化できる。

Section 3-4

ポップアップ・スライドインのタイミングとターゲティング設定

ポップアップは「邪魔だ」と思われた瞬間にブランドイメージが傷つく諸刃の剣だ。適切なタイミング・適切なオーディエンス・適切なオファーの3つが揃ったときだけ、高いコンバージョン率を発揮する。

ポップアップ表示タイミングの種類と使い分け

ターゲティング設定:誰に表示するかを絞る

HubSpot のポップアップには表示条件(ターゲティングルール)を設定できる。誰にでも表示するのではなく、適切なオーディエンスに絞ることでコンバージョン率と UX を両立させる。

ターゲティング条件設定例活用シーン
表示ページ 特定URL / URL パターン / ブログカテゴリ 「MAツール比較記事」を読んでいる人にだけ MA ebook のポップアップを表示
訪問回数 初回訪問のみ / 2回以上 初回訪問者には入門ガイド、リピーターにはデモ申込を表示
コンタクト状態 未知訪問者のみ / 既知コンタクト除外 すでにコンタクト化した人にはポップアップを出さない(UX 重視)
デバイス PC のみ / モバイル除外 モバイルでは Exit Intent は機能しないため PC 限定にする
流入元 特定 UTM source / 広告流入のみ Google 広告から来た訪問者に特定のオファーを表示(広告との一貫性を保つ)
✅ ポップアップの「抑制設定」を必ず入れる

同じ訪問者に同じポップアップを何度も見せると UX が破壊される。「1回表示したら X 日間は再表示しない」「フォーム送信済みの人には表示しない」の2つの抑制ルールを必ず設定すること。HubSpot のポップアップ設定画面の「再表示しない」オプションで管理できる。

Section 3-5

チャット・チャットボットでのリード自動獲得

HubSpot のチャット機能は「ライブチャット(人間が対応)」と「チャットボット(自動対応)」の2つで構成される。2025〜2026 年にかけて Breeze Customer Agent が強化され、単純な Q&A 応答を超えた「フロントオフィス AI」としてリード獲得・資格確認・商談予約まで自動化できるようになった。

ライブチャット vs チャットボット vs Breeze Customer Agent

種類特徴最適シーンプラン
ライブチャット 担当者がリアルタイムで対応。温度感の高いリードに最適 営業時間中のデモ問い合わせ・高単価商材 全プラン
チャットボット(フロー型) 事前設定した分岐フローで自動応答。24時間対応可能 FAQ・資料案内・フォームへの誘導 Starter〜
Breeze Customer Agent AI が Web サイト・ブログ・ナレッジベースを学習して自律応答。CRM データにアクセス可能 24時間リード対応・資格確認・ミーティング予約 Professional〜

Breeze Customer Agent によるリード獲得フロー

🤖 Breeze Customer Agent — リード獲得の自動対話例
🤖
こんにちは!HubSpot の導入についてご質問はありますか?資料のご案内や、ご要件のヒアリングもお手伝いできます。
👤
マーケティングオートメーションの機能について知りたいです
🤖
ありがとうございます。HubSpot Marketing Hub では、ワークフロー自動化・リードスコアリング・メール配信・AI による個別最適化が使えます。より詳しい資料をお送りすることも可能です。お名前とメールアドレスを教えていただけますか?
↓ CRM にコンタクトを自動作成 ↓
👤
山田 太郎、yamada@example.com です
🤖
山田様、ありがとうございます。現在ご利用中のMAツールや、特に解決したい課題はありますか?担当者がより的確なご提案ができるよう確認させてください。
↓ リード資格確認(Qualify)を自動実行 ↓
🤖
承知しました!専任の担当者との30分のオンライン相談を無料でご用意できます。ご都合のよい日時を選んでください。
↓ HubSpot ミーティングリンクを自動表示・CRM に商談を自動作成 ↓

Breeze Customer Agent の設定手順

  1. ナレッジベースを準備する:よくある質問・製品説明・料金ページなどのコンテンツを HubSpot に登録する。Agent はこれを学習して回答の根拠にする
  2. Agent を有効化するマーケティング → チャット → Customer Agent から設定画面へ。Agent の名前・アイコン・対応言語を設定する
  3. ガードレール(回答範囲)を設定する:Agent が回答しない領域(競合比較・法的判断・価格交渉など)をルールとして設定し、この範囲外の質問は担当者にエスカレーションするよう設定する
  4. CRM 連携を確認する:チャットで収集した情報(名前・メール・課題)が自動的にコンタクトプロパティに反映されることを確認する
  5. コーチングダッシュボードで品質管理をする:Agent の回答履歴を「Top Performers(解決率高)」「要改善(誤回答)」に分類して定期的に確認・チューニングする
🆕 2026年:Breeze Customer Agent の音声対応と WhatsApp 連携

2025〜2026 年にかけて Breeze Customer Agent は音声会話(音声チャット)への対応と、WhatsApp・SMS などのメッセージングチャネルへの拡張が進んでいる。テキストチャットと同じ CRM コンテキストで音声質問にも応答できるため、電話問い合わせの自動化にも活用できるようになってきている。

Section 3-6

CTA の設計と設置 — スマート CTA でコンテンツを出し分ける

CTA(コール・トゥ・アクション)はリード獲得の最後のトリガーだ。ページ上のどこに・どんな文言で・誰向けに設置するかで、コンバージョン率は大きく変わる。HubSpot では スマート CTA を使って、訪問者の属性・ライフサイクルステージ・デバイスによって表示内容を自動で切り替えられる。

CTA の種類

🔘
ボタン CTA
最も汎用的。テキスト・色・サイズを自由に設定できる。配置・文言・色の A/B テストに最適。
全ページで使用可
🖼️
画像 CTA
バナー形式でサイドバー・記事末尾などに設置。資料・セミナー案内など「視覚的に訴求したいオファー」に適している。
ブログ・コンテンツページ
📝
テキストリンク CTA
記事本文中に自然な形で埋め込む。コンテンツの文脈に沿った CTA なのでクリック率が高い傾向がある。
ブログ記事・ナレッジ

スマート CTA の活用

スマート CTA は同じ場所に配置しながら、訪問者の属性によって異なる CTA を自動表示する機能だ。既知/未知・ライフサイクルステージ・リストメンバーシップ・デバイスなどの条件で切り替えられる。

🎯 スマート CTA の設定例 — 同一ページ上での出し分け
未知の訪問者
「無料で始める」「資料をダウンロード」(認知・獲得目的)
既知コンタクト(リード段階)
「事例集を見る」「ウェビナーに参加する」(ナーチャリング目的)
MQL・商談中のコンタクト
「デモを予約する」「無料相談を申し込む」(成約加速目的)
既存顧客
「上位プランを見る」「サポートに連絡する」(拡大・維持目的)

CTA のパフォーマンス改善チェックリスト

✏️ 文言の設計

  • 「送信する」「クリック」ではなくベネフィットを表す文言か(「無料で資料を受け取る」等)
  • 1人称に近い表現か(「私の資料を受け取る」は効果的なことがある)
  • 緊急性・希少性のある言葉を使いすぎていないか(過剰は信頼を損なう)
  • CTA の前の文脈(見出し・本文)と内容が一致しているか

🎨 デザイン・配置

  • ページのメインカラーと区別できる目立つ色を使っているか
  • ボタンの周囲に十分な余白があり「押せる」と認識されるか
  • ファーストビュー内に CTA が1つ以上あるか
  • モバイルでタップしやすいサイズ(最低 44px × 44px)か
  • ページ全体で CTA が3つ以上ある場合、優先順位をデザインで表現しているか

📌 第3章 まとめ

フォーム種類の使い分け

埋め込み(能動的コンバージョン)・ポップアップ(受動的接触)・収集フォーム(外部連携)の3種類を目的で選ぶ。

プログレッシブプロファイリング

複数回の接触で少しずつ情報を取得する。MQL 判定に必要な項目から逆算して取得順序を設計する。

hidden フィールドで UTM を取得

フォーム送信時に UTM を自動取得することでアトリビューション精度が劇的に上がる。JS の設置を忘れずに。

ポップアップは3つの条件が揃ったとき

適切なタイミング × 適切なオーディエンス × 適切なオファーが揃って初めて高CVRになる。抑制設定も必須。

Breeze Customer Agent の自動リード獲得

24時間 AI が対応し、コンタクト作成・資格確認・ミーティング予約まで自動化。ナレッジベースの充実が品質の鍵。

スマート CTA で出し分ける

未知訪問者・リード・MQL・既存顧客でそれぞれ異なる CTA を表示する。同じ場所で異なるオファーを自動切替。

次章:第4章 Segments とパーソナライゼーション — 「全員に同じ」を卒業する

静的リストから動的 Segments(セグメント)への移行・既知コンタクト × 匿名訪問者の統合ターゲティング・Personalization アプリによる Web・メール・CTA のリアルタイム出し分けまで、2026 年型のオーディエンス設計を完全解説する。

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